3.リアルタイム皆既日食−黒い太陽

(この章は緊迫感をだすために語調を変更しています)

 10時を回ると太陽は大きく欠け、肉眼でもちらっと見ると欠けている。
ついでに彗星や恒星を意識して空をぐるっと見回すが、まだ輝きだしていない。 太陽の西には
水星が輝きはじめ、やがてその西には金星が輝きだす。 第二接触もすぐそこまで迫っており、
暗さを増してきます。そして心配されたとおりに街灯が点きだし、空の色も夕方のような感じに
なってきていやがおうでも心拍数が増えてきます。 時計を気にしつつ行動しているのですが、
相棒からみるとのんびりとうろついているように見えるのか、
「まだこんなことしてていいの〜」
と声がかかります。時計を見るともう数分で第二接触です。

 ビデオとカメラの視野に太陽が入っていることを確認してシャッターとフィルターに手をかけ
る。 みるみると細くなっていく太陽をみながらまずシャッターボタンを押す、しかし、レリー
ズにロックがかかっており巻き上げに支障がで、あわててはずすも第二接触の瞬間をはずしてし
まう。 次のコマを撮影したときにはさらにミラーアップしたままとなりファインダー内は太陽
さながら真っ黒。(*_*) このハプニングにビデオカメラのフィルターをはずすのを忘れ(^^;)、
皆既日食開始30秒後にようやくビデオにコロナの輝きが戻ってきた。
 一方のカメラの方は外部コロナを狙うためにシャッタースピードを変更しようとしますが、予想
以上に暗くてカメラに目を近づけないとはっきりと見えません。明らかにメキシコよりは暗いと
認識する。 太陽高度が21度と低いせいか空の色も夕方のように複雑な色あいで、メキシコのあ
くまで青かった空とは違う。 シャッタースピードを変更して撮影再開するもミラーはあくまで
アップ状態(;_;)。 あげくにリカバリを一回だけと思って触ったとたんに同じ三脚に同架してい
たビデオも若干ズレてしまった。この瞬間にカメラ放置を決断し、そしてもう一台の広角(彗星−
日食狙い)カメラのシャッターを何枚か切ります。 ビデオがハプニングでずれたのを確認して
修正するが、視野に水星が写っているのを確認するとすかさずパンして金星まで含めて撮影する。
転んでもただでは起きぬとはこういうことか。

 第二接触からこの間は1分。まだまだ時間はあるので双眼鏡をバッグの中から探すが、あくま
で目は太陽へと向かったまま。 一通り手さぐりで見つからないのでこれもあきらめる。とにか
く時間がないのでダメとわかった瞬間から次へと頭を切り換えて行く。今回の日食最大の関心事
といっていいヘールボップ彗星を探すがこれは見つからない。 目が太陽ばかり見ていたので慣
れていないのであろうか、それとも街灯の影響がでていたのであろうか。それはともかく太陽を
ひたすら肉眼でみることに専念し続ける。 おかげでずいぶんと肉眼で楽しむことができたのが
言い訳に聞こえるかもしれないがもっとも嬉しかった。なにせ一番の贅沢なのだから。

 さて、どのように太陽が見えているかというと、コロナが東西水平に広がり北東に伸びている
のを含めて3方に伸びている。 メキシコで見えたプロミネンスはまだ見えてこない。 

 時計を見ると皆既時間もあと一分を切った。黒い太陽も西側が明るくなってきた、と思うと、
赤く見えてきた。プロミネンスだ! この時のシーンをビデオで確認すると大きな声で残ってい
る。 ビデオではつぶれてしまって見えないのだが肉眼ではその全てが見える。そして太陽がそ
の姿を見せる方向からも赤く伸びているのがわかり、都合北西と西の方向の2カ所から見えてい
る。 そして、今度こそ失敗しないようにとフィルターに手をかけてダイヤモンドリングを待つ。

 そして太陽が鋭い輝きとともにその姿を表し、背後からは復活を喜ぶかのように車のクラクシ
ョンが鳴らされて歓声が沸く。 思い出してみると皆既の間は静寂が支配していたかのように音
の記憶がない。残っているのは黒い太陽のイメージとシャッター音のみである。それだけ集中し
ていたということか。

 皆既が終わると無事皆既を見られた喜びからか、それとも緊張感の解放からか、静寂を忘れた
ように雄弁になり、誰かとこの喜びを分かち合いたいという素直な気持ちなのだろう。 

皆既直後の記念写真
露出補正を加えているので明るいですが、ネガはとても暗いです。
(Fuji Film写るんです)

 やがて冷静さを取り戻して周りを見るとあれほどたくさんいたロシア人たちはその数を減らし、 一緒にビデオを撮っていた人も片付け始め、互いに握手をして記念写真を撮って別れる。 しか し、この写真は皆既終了直後ということを忘れて「写るんです」を使ったばかりに露出不足とな っていた。(まあなんとか見れるが)  そしてすっかり忘れていたシャドーバンドにこの時に気づく。 幸い地面は雪で真っ白であるか ら見やすいことこのうえない。 メキシコでみたような青空を粒が飛んでいるようなのは見えな いが、地面は陽炎のようにゆらゆらとしていた。 日食ガイドブックには見られるのは数分とな っているが、皆既が終わっても15分近く見えていたようだ。  この時の気温は氷点下25度。 しかし全く寒さを感じなかい熱い時は終わった。

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