入居中の借家やマンションが競売により第三者に競落された場合は?

投稿日時:2018/12/17

Q.入居中の借家やマンションが競売により第三者に競落された場合は?


 

入居している借家(マンション)は競売にかけられましたが、聞くと、私が借りて入居する前から借家(マンション)に抵当権がついていて、家主がその借金を払えなくなったために競売にかけられたようです。
 

入居していれば、その後借家の所有者が変わっても借家権を対抗できるという話を耳にしたことがありますが、この場合は、どうなるのでしょうか。

 

A.建物を賃借して入居する前にすでに建物に抵当権の設定登記がされていて、その抵当権による競売がされた場合には、①平成16年3月31日以前に短期賃貸借としての対抗要件を備えている場合は、原則として、競売による買受人(新所有者)に対し借家権を対抗できますので、明け渡す必要はありませんが、②それ以外の場合(平成16年4月1日以後に賃借した場合など)は、買受人(新所有者)には対抗できず、明け渡さなければなりませんが、競売代金支払いの時から6か月間は明渡しの猶予が認められます。

 

【賃借権と抵当権の優先関係】
 

建物(マンションも含みます。)賃借権は、賃借人が建物の引渡しをうける、つまり建物に入居することによって、第三者に対抗することができますので、引渡し(入居)後に第三者が家主から建物を買い受けた場合でも、賃借人は第三者(新しい家主)に自己の賃借権の存在を主張することができます。
 

しかし、賃借権の対抗要件を備える前に、つまり建物に入居する前にすでに建物に抵当権の設定登記がつけられていたときは、その賃借権と抵当権との間では、先に対抗要件を備えた抵当権の方が優先します。
 

その結果、抵当権にもとづく競売がされてその競売手続きで第三者が競落して建物の所有者になった場合は、その第三者(買受人)の所有権は、抵当権の優先的地位を引き継いで、賃借権に優先しますので、賃借人は、買受人には賃借権を主張することができないのが原則です。
 

逆に、賃借人が入居した後に抵当権の登記がつけられた場合には、賃借権の方が順位が先で優先しますので、賃借人は、買受人に賃借権を主張することができます。
 

ご質問の場合は、抵当権の登記の方が先のようですので、原則として賃借権を主張できない場合にあたります。

 

【短期賃借権の保護(旧法)】
 

しかし、抵当権より後に設定された賃借権でも、民法602条のいわゆる「短期賃借権」(通常の土地の場合で5年以内、建物の場合で3年以内の存続期間の賃借権)に当たるもので、平成16年3月31日以前に設定された対抗要件を備えている場合は、抵当権に対抗することができるとされています。
 

したがって、ご質問の場合の建物賃借が期間3年以内のものであれば、抵当権に対抗できる、すなわち、買受人に対抗できる、ということになるのですが、抵当権による差押えの登記がされた後に3年の期間が満了した場合には、判例上、法廷更新は認められていませんので、更新されずに賃借権は消滅することになります。

 

また、賃借権の期間が定められていない建物賃貸借であれば、一応短期賃貸借にあたると解されていますので、競落人に対抗できますが、競落人から解約申入れをされた場合には、借地借家法所定の正当事由があるものとして解約を認められてしまう可能性が高くなりますので、安心はできません。
 

【建物の明渡猶予制度(新法)】


平成16年4月1日施行の民法改正(以下「新法」といいます。)により、短期賃貸借といえども、同日より前に設定され対抗要件を備えているのでないかぎりは、後順位抵当権者(ひいては買受人)には対抗できないものとされました。


前期の短期賃貸借権の特例的保護が競売などで濫用されるという弊害があったために、同保護制度が廃止されたわけです。

 

その代わりとして、新法により、建物の賃貸借については明渡猶予制度が設けられました。

 

これは、前記保護をうけられない建物賃貸借は買受人に対抗できない(したがって、建物賃貸借は買受人に引き継がれない)けれども、買受人の買受の時(競売代金支払いの時)から6か月間は明渡しを猶予してもらえる、というものです。

 

ただし、競売開始(差押)前から建物を占有している必要がありますので、競売開始後に賃借をした人は明渡猶予から除外されます。なお、強制管理、担保不動産収益執行の管理人から競売開始後に賃借した人は除外されず、6か月の明渡猶予をうけられます。

 

他方、明渡しを猶予される期間中といえども買受人に対して使用の対価(賃料相当損害金で、賃料と同額です。)を支払う義務はあり、買受人から相当の期間を定めて1か月分以上の支払いを催告されたのに、その期間内に支払わないと、その期間経過時に明渡猶予は受けられなくなりますので、直ちに明渡しをしなければなりません。
 

なお、土地の賃借権についてはこのような明渡猶予制度はありません。
 

【借りるときの注意】


以上のように、抵当権の登記がすでについている建物を借りるのは、大きな危険がともないます。抵当権の有無は建物の登記簿謄本を見れば容易に確認できますので、借りる前に注意して確認しておくべきことです。
 

ただし、不動産業者の仲介で借りる場合には、不動産業者が賃借希望者にこのような重要な事項の説明をする義務がありますので、その説明がないまま借り受けた場合には、買受人に賃貸借を主張できず明渡しに応じざるを得なくなったことによる損害は、不動産業者に対して、賠償請求できると考えられます。
 

《参考となる法令など》
 

借地借家法31条(旧建物保護法1条)

民法(新・旧)395条、602条

平15法134改正附則5条

最判昭38・8・27判時351・31

最判昭43・9・27判時535・50

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